目次
1.埋込み型除細動器
とは
2.高周波カテーテル
アブレーション
3.心臓ナビゲーション
システムを用いた頻拍症の電気生理検査について
4.ペースメーカー
とは…
5.臨床心臓電気生理学的検査
6.外来で行なう不整脈の検査

1.埋込み型除細動器とは・・・

1-2.まず基本のお勉強・・・

 心臓は、安静時には毎分50回から80回程度、規則正しく拍動し、全身に血液を送り出しています。運動すれば必要に応じてその回数が増加し、睡眠など身体を休めている間は減少して、その時点その時点において身体にとって最も良い回数を取りながら常に動き続けています。時々刻々この「最も良い回数」は変化するので、心拍数はダイナミックに変動しています。不整脈というのは、このような正常な脈とは違った心臓の拍動すべてを指して言う言葉です。たとえば、脈がとんだり、余分にうったりするものや、突然どきどきと早く打ち始めてとまらないもの、急に数秒間心臓の止まるものまであります。

 心臓の病気には大きく分けて2種類あり、1つは、心筋梗塞や心筋症など、血液を送り出すために力を発揮する作業能力が低下してしまうもので、もう1つは心臓全体の筋肉がうまく調子を合わせて収縮できるようにそのタイミングを指令する指揮系統が異常をきたした病気です。不整脈は、後者の病気、というわけですが、個々の心筋が正常でも、何百万もある心筋細胞が秩序正しく収縮しなかったり、異常な順序で収縮すると、血液を前へ押し出す事ができず、身体に必用な酸素や栄養分を供給できなくなってしまいます。このような指令は実は弱い電流で、心筋細胞自身が細胞膜の内側と外側で約100mVの電位差を作り出し、周期的にそれを変化させることで弱い電流を伝播させ、心筋収縮を開始する信号としています。
 このような、指令としての電流を伝播する高速道路として、一般の力仕事をする作業心筋とは別に、特殊心筋が心臓中に網の目のようにはりめぐらされています。正常な心臓では、一般の作業心筋が独自に指令を発する事はなく、特殊心筋、しかもその系統の最上流(右心房にあります)にあたる洞結節という一番の大将だけが独自に指令を発し、ここから出た電流が心房、房室結節、ヒス束を経て、心室内の特殊伝導系ネットワークへ伝播し、無数に広がった網の目の末端から、作業心筋へ伝わっていきます。


図2)心臓刺激伝導系と活動電位
心臓を縦切りにした図です。洞結節で発生した興奮は、青い経路を伝って電気的な指令として
各部に行き渡りますが、心筋細胞はそれぞれの場所によって特徴的な電位変化を示します。



 このような指令の流れに異常をきたして急に脈が止まってしまう病気(徐脈性不整脈)については、早くから「心臓ペースメーカー」が使われ、脈の不足したときには弱い電流により心臓を刺激して、正常な脈を維持するようにしてきました(別項参照)。
逆に、何らかの心筋疾患があると、異常な部位からこのような指令が作り出され、正常な指令系統を通らずに速い脈を突然きたしてしまう事があります。このような頻拍性不整脈は突然の動悸発作をきたしますが、その心拍数と心機能(心臓がだせる力)そして個人の感受性によって症状も重症度も大きく変わります。一般には広範囲に傷害された心筋梗塞や拡張型心筋症をもち、心室から異常な指令を発生するようになったケースが重症で、発作中息切れや失神を生じ、突然死することも稀ではありません。
逆に、作業心筋には異常がなく、あまり速くない不整脈だけをもつ方であれば、動悸発作中も平気で仕事をする人もあります。


治療として、もともとの作業心筋の病気がある場合にはそれをしっかりと治療するのが基本ですが、不整脈の治療としては、作業心筋の障害程度が軽い場合には薬剤(抗不整脈薬)によって異常な指令(興奮)を抑制したり、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)や手術によって異常な興奮の発生する部位を除去したりします。しかし、もともと広範囲に心筋が傷害されている方では、このような方法では不整脈が予防できず、しかもいったん発作が起こると一秒を争って停止させないと命に関わることが多いため、救急車を呼んでいては間に合わないケースがあります。このような場合に、もし不整脈を自動的に検出し、即座に停止させてくれる器械があれば、突然死をかなり防ぐ事ができます。


 埋込み型除細動器は、このような考えのもとに開発された医療機器で、1980年アメリカのジョンス・ホプキンス大学にてミロウスキ医師により世界ではじめて使用され、近年の電子技術の進歩により大幅に小型軽量化されました。1996年からは医療保険が適用されるようになり、都道府県により認可された施設においてのみ埋め込み術が認められています。
 また、たとえ「心筋の力をだす能力」に異常がなく不整脈のみの病気であっても、治療法のない重症不整脈をおこして失神を繰り返す方には、埋込み型除細動器を使用することもあります。病名としては、QT延長症候群やブルガダ症候群などがあります。
 
 いずれにしても、この器械は、救急車を呼んでいては間に合わないような緊急事態に備えるためのものであり、病気そのものを治したり軽減したりする作用はまったくない、という事は認識しておく必要があります。したがって、病気の治療として飲まなければならないお薬やその他の治療は、器械をいれてもいれなくても、基本的に同じと考えてください。
さらに、不整脈の発生頻度を減らして、突然死の危険をより減らす意味で、不整脈のお薬も同時に飲む場合が多いと思います。
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